産後の不調による症状

産後は、身体と心に大きな変化が訪れる大切な時期です。出産による体力の消耗に加え、ホルモンバランスの乱れや育児のストレスが重なることで、不調が現れやすくなります。
主な症状には、以下のようなものがあります。

産後の不調による症状
抜け毛 産後数ヶ月に起こりやすい一時的なものですが、多くの方が不安を感じます。
体力低下・疲れやだるさ 出産や育児による疲労が積み重なり、日常生活に影響を及ぼします。
気分の落ち込み(産後うつ) ホルモン変動に伴う心の不調で、情緒が不安定になることもあり注意が必要です。
めまい・立ちくらみ・貧血 出産時の出血や鉄分不足によることが多く、息切れなども起こりやすいです。
腰痛・骨盤の違和感 妊娠・出産の影響で骨盤や腰に負担がかかり、不安定感や痛みを感じる場合があります。
乳房の張り・痛み・乳腺炎 授乳開始による変化で、乳房の痛みや炎症が起こることがあります。
悪露の異常 子宮や産道からの分泌物の量や色、においの変化に注意が必要です。
発熱 子宮内感染や乳腺炎、尿路感染などが原因で発熱することがあります。
睡眠不足や関節痛、
肩こり、頭痛、尿もれなど
個人差はありますが、多様な症状がみられます。

抜け毛の原因と特徴

抜け毛の原因と特徴

産後の抜け毛は、多くの方が経験する一時的な現象で、その主な原因はホルモンバランスの急激な変化にあります。妊娠中はエストロゲンなど女性ホルモンの影響で髪の成長期が長くなり、抜け毛が減るのですが、出産後にホルモン量が急激に減少することで、妊娠中に抜けなかった髪が一斉に抜け落ちます。これを「分娩後脱毛症」と呼び、通常は半年から1年ほどで自然に回復します。
慣れない育児によるストレス、睡眠不足、不規則な食事、過度なダイエットや栄養不足は抜け毛を悪化させるため、身体の回復と生活習慣の見直しも必要になってきます。

抜け毛に効果的な漢方薬

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) 血流を改善し、血虚(血の不足)を補うことで髪に栄養を届ける効果があります。冷え性や貧血傾向、産後の抜け毛、生理不順などを伴う方に適しています。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう) 体力や気力が低下し、疲れやすい方におすすめです。全身のエネルギーを高めて、髪に十分な栄養を届けるサポートをします。
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう) 気血を同時に補うことで、体力低下や疲労感が強く、抜け毛が多い方の体調回復に役立ちます。
加味逍遙散(かみしょうようさん) ストレスや自律神経の乱れ、イライラ、肩こり、便秘などの症状を伴う場合に用いられます。ホルモンバランスを整えて抜け毛の改善を助けます。
柴胡加竜骨牡蛎湯
(さいこかりゅうこつぼれいとう)
精神的ストレスや自律神経の不調が強い方に適しており、心身の安定を促します。

産後の体力低下

産後は、出産による身体的なダメージと育児の負担が重なり、多くの女性が体力の低下を感じます。出産時の大量の出血や筋肉疲労に加え、慢性的な睡眠不足が続くことで、身体のエネルギー代謝が低下しやすくなります。また、ホルモンバランスの急激な変化が自律神経を不安定にし、疲労感や倦怠感を増幅させることもあります。さらに、育児に伴う精神的なストレスが体力回復の妨げになることも少なくありません。
当院では、こうした産後の体力低下に対して、疲労回復や自律神経の調整に効果が期待できる漢方薬を用い、身体全体のバランスを整えることで、日常生活に支障をきたさない体力維持を目指しています。

産後の体力低下

代表的な症状

  • 慢性的な疲労感やだるさ
  • めまい、立ちくらみ
  • 息切れや動くのがおっくうになる
  • 日常生活での体力低下や回復の遅れ

体力低下の主な原因

産後の体力低下は、出産による大量のエネルギー消耗に加え、ホルモンバランスの乱れによる自律神経の不調や、育児による睡眠不足や生活リズムの乱れが重なることで起こります。さらに、出産時の出血や偏った食生活による鉄分不足などの栄養不足が貧血を引き起こし、体力回復を妨げることもあります。加えて、育児や家庭での精神的ストレスも体力の低下を深める要因となっています。これらの複合的な要因が産後の疲労感や倦怠感を強くし、日常生活への影響が現れやすくなります。

効果的な漢方薬

補中益気湯(ほちゅうえっきとう) 体力や気力の低下、疲れやすさ、食欲不振がある方に。全身のエネルギーを補い、体力回復をサポートします。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) 血流を良くし、貧血や冷え、むくみ、疲労感を改善。産後の体力回復や血虚体質のケアに適しています。
十全大補湯(じゅうぜんたいほとう) 気と血の両方を補い、極度の体力低下や慢性的な疲労がある方に用いられます。

気分の落ち込み

産後はホルモンバランスの急激な変化に加え、育児の孤独感や不安感、睡眠不足が重なり、気分が沈みやすくなる時期です。この「気分の落ち込み」はマタニティブルーや産後うつとも呼ばれ、多くの女性が経験します。涙もろくなったり、イライラしたり、不安を感じるなど心の揺れが生じることも珍しくありません。

主な症状

  • 理由もなく涙が出る
  • イライラ、不安感、気分が落ち込む
  • 眠れない、食欲不振、疲れやすい
  • 育児への自信喪失や赤ちゃんに対する愛情の希薄感
  • 孤立感やマイナス思考

症状が長引くと、日常生活や育児に支障をきたすこともあります。

原因と背景

  • ホルモンの急激な減少が脳内の神経伝達物質に影響
  • 慢性的な睡眠不足と疲労
  • 育児や生活環境の変化、サポート不足
  • ストレスの蓄積や性格傾向(完璧主義など)

効果的な漢方薬

加味逍遙散(かみしょうようさん) ホルモンバランスと自律神経の乱れを調整し、イライラや不安感を和らげます。
抑肝散(よくかんさん) 精神的な興奮や緊張を鎮め、ストレスによる症状を緩和します。