PMSとは

PMS(月経前症候群)は、生理の3〜10日前から心身に不快な症状が現れ、生理が始まると症状が軽減または消失する状態を指します。
日本では月経のある女性の約70〜80%が月経前に何らかの症状を経験しており、その中でPMSは症状が強く日常生活に支障をきたす場合をいいます。
症状は200種類以上ともいわれ、精神的にはイライラ、憂うつ、不安感、情緒不安定などがあり、身体的には頭痛、腹痛、乳房の張り、むくみ、疲労感など多岐にわたります。症状の出方や程度は個人差が大きく、同じ人でも月によって異なることがあります。
中でも症状が重篤なものは月経前不快気分障害(PMDD)と診断され、専門的な治療が必要になることもあります。20〜40代の働き盛りの女性にも多くみられるため、適切な理解と対処が大切です。

ホルモンの変動と神経伝達の関係も指摘されており、女性ホルモンの代謝物が脳内の神経受容体に影響を与えることが症状に関わっていると考えられています。

原因

原因

PMSの原因はまだ完全には解明されていませんが、女性ホルモンの変動が大きく関わっています。

特に生理周期の黄体期に、エストロゲンとプロゲステロンというホルモンが急激に低下することが、脳内の神経伝達物質(セロトニンやGABA)に影響し、気分の変動や身体症状を引き起こします。これらのホルモンの変動に対する個人の体の反応の違いも、症状の現れ方に差を生んでいます。

自律神経の乱れやストレス、睡眠不足、生活習慣の乱れ、栄養状態の悪化なども症状を悪化させる要因です。遺伝や体質、環境も複雑に絡み合い、多様な症状を生じる背景へとつながっています。

症状

PMSの症状は精神的なものと身体的なものがあります。

精神的症状

  • イライラや怒りっぽさ
  • 憂うつや気分の落ち込み
  • 情緒不安定
  • 過敏さや集中力低下
  • 眠気や過食傾向

身体的症状

  • 頭痛
  • 腹痛や下腹部の張り
  • 腰痛
  • 乳房の張りや痛み
  • むくみ
  • だるさや疲労感

これらの症状は生理開始の3〜10日前から始まり、多くの場合、生理開始とともに軽減または消失します。症状の程度や種類は個人差が大きく、月によって変動することもあります。重度の場合は、日常生活や仕事に支障をきたし、精神的苦痛が強い場合は月経前不快気分障害(PMDD)と診断されることもあります。

治療

PMSの治療は、ホルモンバランスの調整を中心に、生活全体を見直す多角的なアプローチが基本です。

まずは生活習慣の改善を大切にし、十分な睡眠や適度な運動、バランスの良い食事、ストレス管理を心がけることが症状の改善につながります。症状が強い場合は、低用量ピルによるホルモン療法が月経周期を安定させるために用いられます。

また、漢方薬は自律神経の調整や血流の改善、精神面の安定をサポートし、体質や症状に合わせて処方します。漢方治療は月経困難症の治療に加え、自自律神経失調症に対する治療を組み合わせることが多いです。

精神的な症状が著しい場合には、カウンセリングなどの精神科的アプローチの検討も必要です。患者様一人ひとりの状態や希望を踏まえ、適切な治療計画を立てていきます。

治療

この症状に合う漢方

加味逍遙散(かみしょうようさん) 柴胡(さいこ)や当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、茯苓(ぶくりょう)などの生薬からなり、ストレスや情緒不安定、イライラをやわらげる効果が期待されます。自律神経の調整や血流促進にも役立ち、冷えやむくみ、疲労感を伴う方に適しています。
抑肝散(よくかんさん) 神経の興奮を抑え、イライラや過敏さが強い方におすすめです。柴胡や甘草、釣藤鈎などが配合され、不安感や緊張の軽減に加え、肩こりや頭痛など身体の不調も和らげます。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) 血の滞り(瘀血)を改善し、子宮内の血流を整えることで身体的な痛みやむくみを軽減します。冷えや下腹部のしこり感がある方に向いており、生理痛や生理不順、月経過多の合併症状にも効果的です。
桃核承気湯(とうかくじょうきとう) 特に「瘀血(おけつ)」の改善に優れており、便秘やのぼせ、イライラなどの症状が強い方に適応されます。血の巡りを促し、身体の不調を和らげるので、PMSのうっ滞感や情緒不安定に対して効果的です。
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう) 水分代謝の異常によるむくみやめまい、ふらつきがある場合に用いられ、PMSに伴う身体的なだるさや不快感を緩和するのに役立ちます。