月経過多とは

月経過多とは、生理の出血量が通常より多い状態を指します。一般的には1回の生理での出血量が80ml以上、または7日以上続く場合に該当します。多量の出血によりナプキンの交換が頻繁になり、夜間の睡眠を妨げることも少なくありません。さらに長期間続くと貧血を招き、倦怠感やめまい、動悸などの全身症状が現れることもあります。若い女性から更年期の方まで幅広く見られ、症状を放置すると生活の質が低下します。

月経過多とは

こんな症状ありませんか?

  • ナプキンやタンポンを2~3時間ごとに交換する必要がある
  • 生理の出血に血の塊が混ざる
  • 生理期間が7日以上続いている
  • 夜間に何度もナプキン交換が必要で、眠れない
  • 倦怠感やめまい、動悸などの貧血症状を感じる

原因

月経過多は様々な原因で起こります。

ホルモンバランスの乱れ 卵巣から分泌されるエストロゲンとプロゲステロンのバランスが崩れると、子宮内膜が過剰に厚くなり、出血量が増加します。更年期や産後などホルモン変動の時期に特に多く見られます。
婦人科疾患 子宮筋腫、子宮内膜症、子宮ポリープなどが月経過多の主な原因となります。これらは子宮内の異常増殖や炎症を引き起こし、出血を増やすことがあります。
全身疾患 血液凝固異常、甲状腺疾患、肝疾患など全身の病気が背景にある場合もあります。これらは出血傾向を高めることがあり、注意が必要です。
生活習慣・ストレス 不規則な生活や過度なストレスはホルモンバランスを乱し、症状を悪化させる要因となるため、生活習慣の見直しが必要です。

治療

月経過多は症状や原因によって治療法が異なります。薬物療法、漢方療法、外科的治療、生活習慣の見直しなどを組み合わせて、患者様一人ひとりに合った最適な治療を提案します。

薬物療法

ホルモンバランスの乱れが原因の場合、以下のような治療が基本です。

低用量ピル 月経周期を整え、出血量を減らす効果があります。副作用や効果については医師とよく相談しながら進めます。
黄体ホルモン放出子宮内システム(LNG-IUS) 子宮内に小さな器具を挿入し、黄体ホルモンを持続的に放出。子宮内膜を薄く保ち、出血量を減らします。特に40歳以上の方に向いています。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) 痛みを和らげつつ、出血量を減らす効果があります。
鉄剤補給 大量出血で貧血がみられる場合、鉄剤の補充を行い体調改善を図ります。

漢方療法

漢方薬は体質や症状に応じて選び、血流改善や体調のバランスを整えます。根本的な体質改善を目指す治療として、薬物療法と併用されることも多いです。低用量ピルを内服している間は体に水をためやすい(漢方医学でいう水毒)ため、頭痛・むくみが起こることがあります。漢方薬を併用することで低用量ピルの副作用を軽減できる可能性があります。また、漢方薬単独で過多月経の治療も期待できます。

外科的治療(薬物療法で改善しない場合)

症状が重い場合や子宮筋腫、ポリープなどの病変がある際には、外科的治療を検討します。体への負担が少ない鏡視下手術による子宮筋腫摘出術やポリープ切除術が主に行われ、可能な限り子宮を温存します。また、妊娠を希望されない方には、子宮内膜を焼灼して出血量を減らす子宮内膜アブレーションが適応されることがあります。その他、薬物療法や他の治療で十分な効果が得られない場合には、根本的な治療として子宮摘出術を選択することもあります。

生活習慣の改善

日常生活での症状緩和には、バランスの良い食事や適度な運動を心がけることが大切です。また、ストレスの軽減や十分な休息をとることで心身のバランスを保ち、冷え対策や生活リズムの整備も症状の改善に役立ちます。

この症状に合う漢方

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

血の滞り(瘀血)を改善し、子宮のうっ血を和らげる作用があります。桂枝(シナモンの枝)、茯苓、桃仁、牡丹皮、芍薬などの生薬が協調して血流を促進し、過剰な出血を抑えます。冷え性や中程度の体力で、下腹部のしこり感や痛みがある方に適し、頭痛や顔のほてり、めまいの症状も和らげます。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

血を補い巡りを改善することで体を温める漢方です。当帰、芍薬、川芎、白朮、茯苓、沢瀉などを配合し、冷えや貧血傾向が強い方に向いています。血流改善により過多出血の軽減と生理痛の緩和に役立ち、やや虚弱でむくみのある方にも適用されます。

加味逍遙散(かみしょうようさん)

精神的ストレスや情緒不安定が症状の原因となる場合に使用されます。柴胡、当帰、芍薬、茯苓などを含み、自律神経の調整や血流改善、気持ちの安定を促します。月経不順や過多出血に伴うイライラや不安の緩和に効果的です。