不眠の症状について
不眠は年齢とともに起こりやすく、特に閉経後の女性に多く見られます。日本の調査でも、50歳以上の女性で睡眠に関する悩みを抱える方が増えていることが報告されています。
不眠は大きく分けて以下の4つのタイプがあります。

| 入眠障害 | 寝つきが悪く、布団に入ってから眠りにつくまで時間がかかる状態。 | 
| 中途覚醒 | 眠りについても夜間に何度も目が覚める状態。 | 
| 早朝覚醒 | 朝早く目覚め、その後再び眠れない状態。 | 
| 熟眠障害 | 睡眠時間は十分でも、眠った感じがしない状態。 | 
これらの症状は、たとえば「布団に入ってもなかなか眠れない」「夜中に何度も目が覚めてしまう」「早朝に目が覚めて再び眠れない」「眠りが浅く疲れがとれない」などの形で現れます。
不眠が起こる原因
不眠は、体のさまざまな変化や心の状態が絡み合って起こります。
特に更年期の女性は、ほてりや発汗などの身体的な変化が夜間の睡眠を妨げることが多いです。加えて、不安やストレスなど精神的な要因も不眠を深刻化させる場合があります。
更年期と不眠の関係
更年期は女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)が急に減ってしまう時期です。この変化が、不眠の原因のひとつになっています。
不眠の症状には、なかなか寝つけなかったり、夜中に何度も目が覚めてしまったり、早朝に起きてしまってその後眠れなかったり、眠りが浅いと感じることなど、さまざまな形があります。
また、夜にほてりや寝汗、動悸といった症状が出やすく、それが眠りの妨げになることもあります。
女性ホルモンが減ることで、自律神経のバランスが崩れやすくなり、睡眠をコントロールする脳の働きにも影響が出ます。加えて、エストロゲンの減少で脳の神経伝達物質の働きが弱くなり、不安やイライラ、気分の落ち込みが出やすくなることで、不眠の症状が現れやすくなるのです。
睡眠の質を高めるための漢方処方

睡眠の悩みには、心身の疲れやホルモンバランスの乱れ、ストレスなどが関わってきます。当院では、原因に合わせて漢方薬を処方し、睡眠の質を高める体づくりをサポートしています。
眠るまでの時間、中途覚醒、夢の多さ、悪夢の有無に着目し、身体所見ではストレスや自律神経の状態を確認しながら治療薬を選択します。
| 酸棗仁湯(さんそうにんとう) | 心身の疲労や不安感が強いときにおすすめ。リラックス効果で自然な眠りを促します。 | 
| 加味逍遙散(かみしょうようさん) | 更年期の不調やストレスが原因の不眠、女性ホルモンのバランスが乱れている方に適しています。 | 
| 加味帰脾湯(かみきひとう) | 疲れているのに眠れない、気力や血色が低下している方の体調を整えます。 | 
| 抑肝散(よくかんさん) | イライラや神経が高ぶって眠れないときに使われ、心を落ち着かせる働きがあります。 | 
疲労について
疲労は女性に多く見られるお悩みの一つで、年代や体調によって原因や症状が異なります。
更年期疲労の特徴
更年期の女性の約7割が「疲れやすい」「だるさ」を感じており、これを「更年期疲労」と呼びます。女性ホルモンの急激な減少が脳の視床下部に影響を及ぼし、自律神経のバランスを崩します。結果として血行不良や臓器機能の低下、体温の低下、睡眠の質の悪化が重なり、慢性的な疲労感が続くことが特徴です。休息をとってもなかなか回復しにくいのがつらいところです。
30代女性の疲労
30代の女性は仕事や家庭、育児などの責任が増え、ストレスやホルモンバランスの乱れが疲労感を強めることがあります。特に鉄欠乏性貧血は多く見られ、血液中の酸素運搬能力が低下すると疲労やめまいが起こりやすくなります。無理なダイエットも貧血の原因になるため注意が必要です。
疲労の主な原因と対策
- ホルモンバランスの乱れ(更年期やストレス)
 - 自律神経の乱れによる血行不良
 - 貧血や甲状腺疾患などの病気
 - 睡眠不足や過労
 
疲労感が長く続く場合は、何か病気が隠れている可能性もあるため、検査を受けることをおすすめします。
ストレスと疲労の関係
ストレスは筋肉の緊張や血行不良を招き、頭痛や肩こり、睡眠障害を引き起こします。これらが慢性化すると疲労感が増すため、ストレスをやわらげるケアも大切です。
気虚・血虚からくる不調への漢方アプローチ
疲れやすさや冷え、貧血などの症状は、漢方でいう「気虚(ききょ)」や「血虚(けっきょ)」と呼ばれる体質の現れかもしれません。
| 気虚(エネルギー不足) | 体のエネルギーが足りず、疲れやすい、息切れがする、体力が落ちたと感じる方に多いタイプです。 | 
| 血虚(血の不足) | 血液の量や質が不足し、顔色が悪い、めまいがする、肌が乾燥しやすい、爪が割れやすいなどの症状が現れます。 | 
このようなタイプには以下の漢方薬がよく使われます。
| 人参養栄湯(にんじんようえいとう) | 気虚の方の疲労回復や免疫力アップに効果的です。 | 
| 帰脾湯(きひとう) | 気力が落ちている方の精神面の安定や、血虚に伴う不調の改善に役立ちます。 |