妊活を始めるタイミング
妊娠が成立するためには、正常な排卵が起こり、精子と卵子が出会う通り道である卵管が開通していること、そして子宮の環境が良好であることが必要です。これらの条件が整うことで、受精卵が子宮内膜に着床し、妊娠が成立します。
また、女性の妊娠しやすさは年齢と密接に関わっており、特に35歳を過ぎると卵子の質や数が徐々に低下し、妊娠率も下がっていきます。したがって、できるだけ早い段階から妊活を意識し、生活習慣の見直しや適切な医療機関への相談を行うことが、妊娠の可能性を高めるために大切です。

不妊の主な原因
不妊とは、避妊をせずに1年以上(状況によっては半年以上)妊娠しない状態を指します。原因は女性側、男性側、あるいは両者にあることが多く、一つの問題だけでなく、複数の要因が絡み合うケースも多くあります。
女性側の主な原因には、ホルモンバランスの乱れや排卵障害、子宮筋腫・子宮内膜症、卵管閉塞といった器質的な問題、加齢に伴う卵子の質の低下などがあります。
一方、男性側では精子の数や運動率の低下、形態異常、生活習慣病やストレスなどが影響することがあります。
そのため、不妊の診断や治療では、男女両方の状態を総合的に評価し、バランスよく対応することが重要です。
妊娠しやすい身体づくりのポイント
妊活においては、体調やホルモンバランスを整え、妊娠しやすい身体をつくることが大切です。生活習慣の見直しと漢方などを活用して、日常から体質改善を目指しましょう。
| バランスの良い食事 | 1日3食を規則正しく摂り、たんぱく質・ビタミン・ミネラルなどの栄養素をしっかり補うことが大切です。過度なダイエットや食事制限は排卵障害の原因になるため避けましょう。 | 
| 適度な運動 | ウォーキングやヨガなど無理のない運動を継続することで、血流や新陳代謝が促進され、骨盤内の血流も改善します。運動はストレス解消にも効果的です。 | 
| 十分な睡眠と規則正しい生活 | ホルモンバランスを整えるためには、毎日同じ時間に寝起きし、十分な睡眠をとるようにしましょう。 | 
| ストレス対策 | ストレスは女性ホルモンの分泌や排卵に悪影響を及ぼします。リラックスできる時間を意識的に作ることが推奨されます。 | 
| 冷え性対策 | 冷えは卵巣機能の低下につながるため、体を温める食材や入浴、適度な運動を心がけ、体温管理に注意しましょう。 | 
| 適正体重の維持 | 痩せすぎ・太りすぎはホルモンバランスの乱れや排卵障害の原因となるため、BMI20~24を目安に適正体重を保つことが望ましいです。 | 
| 嗜好品の見直し | 喫煙や過度の飲酒、カフェインの摂りすぎは妊娠率の低下につながります。禁煙や飲酒・カフェインの制限を心がけましょう。 | 
漢方による体質改善

妊活では、排卵やホルモンの問題だけでなく、身体全体のバランスを整えることがとても大切です。漢方医学では、「気・血・水(き・けつ・すい)」という体内のエネルギーや血液、水分の巡りの調和が妊娠しやすい身体の基盤と考えられています。
漢方薬は、その方の体質や症状に合わせて、「冷え」「血虚(けっきょ:血が不足した状態)」「瘀血(おけつ:血行不良)」などの状態を改善し、身体を温めながら巡りを良くすることで、自然に妊娠しやすい身体づくりを支えます。
妊活に特に効果的とされる代表的な漢方薬
| 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) | 血を補い、血流と水分代謝を改善します。冷えや貧血傾向、むくみ、疲れやすさがある虚弱体質の方に適しており、不妊治療の「婦人科三大処方」のひとつとして広く用いられています。子宮や卵巣への栄養を促進し、妊娠しやすい体づくりをサポートします。 | 
| 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) | 血流を良くし、瘀血(血の巡りの悪さ)を改善する漢方薬です。比較的体力があり、下腹部の冷えやのぼせ、月経痛、肩こりがある方に用いられます。血行不良が妊娠しにくさの一因と考えられる場合に適応されます。 | 
| 加味逍遙散(かみしょうようさん) | イライラや不安感、ストレス、自律神経の乱れが強い方に適応。精神的な不調を和らげつつホルモンバランスを整え、妊娠しやすい体質へ導きます。 | 
| 温経湯(うんけいとう) | 冷えが強く、乾燥やほてりを感じる方、または年齢がやや高めの方に使われます。血行促進と体を温める効果があり、着床環境の改善にも役立ちます。 | 
| 補中益気湯(ほちゅうえっきとう) | 胃腸が弱く、疲れやすい、食欲が安定しない方におすすめ。体力や気力を補い、全身の調子を整えることで妊娠力を高めます。 | 
| 八味地黄丸(はちみじおうがん) | 加齢による生殖機能の低下や腎虚体質に用いられ、卵巣機能の改善や発育卵胞数の増加を目指します。 | 
| 柴苓湯(さいれいとう)、 五苓散(ごれいさん)  | 
むくみや水分代謝の異常がある方に用いられます。体内の余分な水分を排出し、身体の軽さを取り戻します。 |