月経困難症とは

月経困難症は、生理の際に強い痛みや不快な症状が現れ、日常生活に支障をきたす状態を指します。多くの女性が経験し、その症状や程度は個人差が大きいのが特徴です。

下腹部の痛み、腰痛、吐き気やめまい、頭痛などがみられ、痛みが強い場合は仕事や学校、家事が困難になることもあります。月経困難症は思春期の女性にもよく見られ、初経後数年以内に発症することが多いです。早期の診断と適切な治療が大切な疾患です。

月経困難症とは

器質性月経困難症とは

器質性月経困難症は、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症などの病気が原因で痛みが起こるタイプです。これらの疾患は子宮に物理的な変化をもたらし、月経期間以外にも痛みを感じることがあります。専門医による診断が必要で、病気の治療を優先することが大切です。

機能性月経困難症とは

機能性月経困難症は、特に器質的な疾患が見つからない場合に該当します。子宮内膜から分泌されるプロスタグランジンという物質が過剰になり、子宮が強く収縮することで痛みが生じます。初経後2~3年で発症することが多く、症状は個人差がありますが、生活に支障をきたすこともあります。

原因

原因

月経困難症の主な原因は、子宮の強い収縮による血流の滞りや炎症、ホルモンバランスの乱れです。特に子宮内膜から分泌されるプロスタグランジンという物質が過剰に増えると、子宮筋が過度に収縮し、痛みを引き起こします。
また、若い方や未出産の方は子宮口が狭く、月経血の排出がスムーズでないことも痛みの原因になります。子宮内膜症や筋腫などの婦人科疾患がある場合は炎症や組織の変化が症状を悪化させます。さらに、ストレスや運動不足、冷え、生活リズムの乱れも痛みを強める要因です。

症状

身体的症状

月経困難症では、下腹部に強い痛みやけいれんを感じることが多く、日常生活に支障をきたすこともあります。子宮の動きによる影響で、腰痛が伴う場合もあります。

吐き気や時には嘔吐が起こることもあり、これは子宮から分泌される物質が血流に乗って体全体に影響を及ぼすためです。頭痛やめまい、そして疲れやだるさを感じる方もいます。これらは身体の変化に伴う自然な反応として起こることが多いです。

精神的症状

身体のつらさと同時に、心の不調も感じる方も多く見られます。イライラしたり、不安な気持ちが強くなったり、憂うつで気分が沈みやすくなることもあります。こうした気持ちの波は、生活や仕事、学校などに影響することもあります。心と体は深くつながっているため、どちらの症状も大切にしながら、無理なくケアを進めていくことが望ましいです。

治療

痛みを和らげる薬物療法 月経困難症の治療では、まず痛みをやわらげることが大切です。一般的には、プロスタグランジンの産生を抑える鎮痛剤(NSAIDs)が使われます。痛みが強くなる前に服用すると、効果的に症状を軽減できます。
ホルモン療法の活用 低用量ピルや黄体ホルモン製剤は、子宮内膜の増殖を抑えて痛みの原因を減らします。最近では、症状を和らげるために連続服用が推奨されることもあります。副作用や効果については医師とよく相談しながら進めていきます。
漢方薬による体質改善 漢方は体質や症状に合わせて使い、痛みだけでなく冷えや血行不良も改善します。体全体のバランスを整えることで、根本的な体調の改善を目指せる治療法です。
生活習慣の見直しと運動 適度な運動やストレスの軽減、生活習慣の改善も症状緩和に役立ちます。治療と合わせて取り入れることで、日常生活の質を高めることが可能です。
器質的疾患がある場合の治療 子宮内膜症や子宮筋腫などの原因疾患がある場合は、それぞれの病気に応じた治療が必要です。

この症状に合う漢方

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) 月経時の下腹部痛や腰痛、冷えやむくみなど血行不良による症状に効果的です。体力中程度からやや虚弱な女性に適し、身体全体の血液循環を促進し心身のバランスを整えます。イライラや不安感の緩和にも寄与し、つらい月経困難症の症状を和らげます。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) 血の滞り(瘀血)を改善し、子宮内の血流障害による強い月経痛や生理不順に効果があります。体力中程度で冷え症が強い方に適しており、身体の巡りを良くして痛みや不快感を和らげます。頭痛やめまい、顔面のほてりなどの症状にも対応します。
加味逍遙散(かみしょうようさん) 精神的なストレスやイライラ、不安感を和らげるとともに、体を温めて月経困難症の症状を緩和します。体力中程度以下の女性に適し、精神面と身体面の両方にアプローチする漢方です。
温経湯(うんけいとう) 頭痛、胃の不調、手湿疹、唇の乾燥を伴い、月経の時に黒い血の塊が出る場合に適しています。月経前症状や月経痛を和らげます。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう) 手足の冷えが強く、頭痛が起こりやすい方に適しています。これらの症状と同時に月経痛を緩和します。
桃核承気湯(とうかくじょうきとう) 月経前の1週間ごろから便秘が強くなり、同時にイライラするという方に適しています。便秘、月経痛、イライラを緩和します。
五苓散(ごれいさん) 月経前後にむくみと頭痛がひどくなる方に適しています。
抑肝散(よくかんさん) 神経の興奮を抑えて精神的な緊張や不安を緩和し、月経前の情緒不安定な状態に効果的です。イライラや不眠、神経過敏な症状に悩む方に適しています。

以上は代表的な漢方薬ですが、病歴や身体診察から適する薬剤1〜2種類を選択し、治療を行います。早い場合は次の月経のときには症状が緩和することも珍しくありません。症状に対して薬剤を選択するのではなく、症状の組み合わせから体の中で何が起こっているのかを推測して治療するのが漢方専門医の腕の見せどころです。
治療開始して1~2か月は不正出血や月経周期の乱れが起こることがありますが、これは体が治療に反応している前触れであることがあり、その症状を踏まえて治療薬を継続するか変更するか判断いたします。